愛のシルシ 「珍しいやん、快斗が本読んどるなんて」 「ふふふん♪」 平次の目が驚きで大きくひらく。 マンガかと思って本を覗き込むと、そこには活字が縦になって並んでいた。 「熱でもあるんとちゃ〜う??」 「俺だってたまには文学少年になるんだっての」 「ほー」 「ほー、じゃない!!見ろ、こんなにちっこい字で、こんなに分厚いんだぞ!」 「いつもなら自分の記事が載っとる新聞しか読まへんのになぁ〜」 「これは新聞と違うんだ!!」 そう言うと、目を本に移す快斗。 すごいやん、コイツが新一以外のことでこんなに真剣になるなんて。(失礼) と、平次が思ったときだった。 「なぁ、西の探偵さん」 「んぁ?ああ、何や?」 「この本、持ってるか?」 そう言って、文庫本を指差す。 「バカにしたらあかんで!推理モノをどわーっと持っとるわ!」 「じゃなくてこのマークがついてるやつ!」 「このマーク??」 快斗がさらに本のカバーを指差す。 そこには角のほうに三角のマークがあった。 「……コレが、何や?」 「知らねーのかぁ?!」 あーあーあーあー、というような顔をして、快斗が平時の顔を哀れんだように見る。 「コレ集めると、景品もらえるんだぞ」 「あ、だからお前本読んどるんやな!!!」 「ばっ!!!コレは愛なんだっ!」 「景品への?」 「ちっがーう!!新一への!」 「工藤は推理モノしか読まへんで?」 「そんなの知ってるよ!まぁいいから聞け。」 ―――数日前 久しぶりのデートで、快斗はUFOキャッチャーでパンダのぬいぐるみをとった。 最近CMで、美人のお姉さんが『うばっちゃったvv』とかするやつ。 「おぉ、快斗すごいじゃねーか」 「へっへ〜!マジックだけが俺のとりえじゃねーんだぞ〜」 「俺、こういう白と黒のものに、何か惹かれるんだよなぁ」 101匹わんちゃんだろー シマウマだろー シャチだろー うしだろー スヌー○―だろー 囲碁だろー オセロだろー 一番はパンダだろー 新一はどんどん、白と黒のものの名前を挙げていく。 「あ、パンダといえば!」 「え?」 「文庫本のキャラクターのパンダが、すっげぇかわいいよな!!」 「てワケ。このマーク集めたらそのパンダがもらえんだ!」 「なるほど!」 「一冊一冊、ちゃんと読んでいって、んでマークが20枚たまったら送ってー ペアマグカップ送るんだ!!しかも新一の誕生日までに!!いい考えだろっ?」 「ななななななんと!それはホンマか?」 「ふふん!あったりまえだろっ」 「俺も、本読まなあかんやん!」 「ぬあ!負けねー!」 大好きな新一のためなら たとえ火の中水の中 どんなことでも、やってやる! 読書に燃える快斗と、それに負けじと本を読み始める平次を見て 冷静なツッコミ役、灰原哀はつぶやくのであった。 「本買うだけ買っといて、マークだけ先に送ったほうが早いとおもうけど。」 5月4日 新一の誕生日当日 「しんいちー!!!」 「おわっ!快斗!お前…なんだ、その目のクマ」 「愛の傷跡さ…まぁ、そんな事はどーでもいいんだ。コレ!」 「…マグカップ?」 「新一、そのパンダ好きなんだろ?誕生日プレゼント!」 「あ…あぁ、サンキュー。」 「ふふふん♪いいって!」 かわいらしいペアマグカップ。 (確かこれ、20冊本読んだら貰えるやつだったよな…) かわいいパンダのイラストと、快斗の目の下のすごいクマを交互に見る新一。 「快斗。」 「なに?新一」 「お前の目の下のクマ、パンダみたいだぜ!」 そう言うと新一は軽く快斗の頭をなでた。 ハッピーバースディ、新一!!! |
+春日より+ 素敵な小説を、フリーとのことでいただいてきました。 新一の為に一生懸命な快斗君が本当にツボです。 パンダ好きの新ちゃんもなかなか、かわいらしくてww しか〜し、個人的には哀ちゃんが本当にloveですね。 あのツッコミはきっと、彼女にしかできないでしょう(笑) 本当に素敵な小説をありがとうございました。 |