いや〜、怖かった怖かった(笑)

 

新一をさらってくる時の哀ちゃんの視線・・・。

 

射殺されるかと思ったなぁ・・・(汗)

 

とりあず、仏頂面したお姫様のご機嫌とりでも行きますか♪

 

 

 

 

君の虜

〜文化祭パニック〜〈後編〉

 

 

 

 

「黒羽君、黒羽君! 見て見て見てぇ〜〜!!」

 

「きゃ〜〜! 似合ってるぅ〜、美人〜〜!」

 

「男の人じゃないみたい!」

 

「アイドルもビックリね!」

 

「んあ?」

 

 

王子の衣装に身を包んだオレ、黒羽快斗(17)は、控え室からの声に間抜けな反応をする。

 

この部屋の中には今、オレの恋人、工藤新一(17)がシンデレラの衣装に着替えている最中だ。

 

 

「ほらほら、見てってば!」

 

「ちょっ・・・ひっぱんなよ」

 

 

シンデレラの出来によほど自信があるのだろう。

 

衣装兼メイク係の女子は、扉から腕を出してオレの袖を引っ張った。

 

部屋の中を覗いた瞬間、絶句した。

 

 

そこには、シンデレラの淡いピンクのドレスに身を包んだ新一が、イスに座ってこちらを見ていた。

 

サラサラのロングのウィッグをはだけた肩に流し、白い肌に良く映える紅がとても印象的だった。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

ざっと10秒、見つめあったまま固まった。

 

ああそっか、結婚式の新郎ってこういう気分なんだ。

 

 

「快斗・・・」

 

 

赤い唇から言葉が発せられ、沈黙が破られる。

 

新一がオレの名を呼んでくれるだけで顔がニヤけてしまうオレは、やっぱり末期だ。

 

 

「新一、きれいだよ?」

 

 

柔らかい笑みで囁くように言う。

 

すると、新一も笑ってくれた。

 

 

「快斗・・・・・・・・・・・・ざけんなよ?(にっこり)」

 

 

ピキッと場が凍りつく。

 

 

周りの女子達のサァ――という血が引く音が聞こえたような気がした。

 

「じ、じゃあ、あたし達はこれで・・・」なんて言いながら控え室を去る。

 

顔が青いですよ、お嬢さんたち・・・?

 

 

とりあえず立ちっぱなしもなんだから、新一のそばに座る。

 

ほのかに香水の香りがした。

 

劇なのに匂いにまで気を使ってどうすんだか。

 

少し呆れたが、個人的に嫌いではないので良しとする。

 

 

改めて新一を見た。

 

近くで見ても、新一は綺麗だった。

 

今時ありえないくらいのきめの細かい肌をしていて、まつげも長い。

 

そんな人が恋人で少し誇らしく思った。

 

 

だがそんな容姿とは裏腹に、当の本人はひどくご機嫌斜めだった。

 

な、なんとかしなくては・・・!(汗)

 

 

「えっと〜、新一さん?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・(怒)」

 

 

怒ってらっしゃるのね・・・・・・・(汗)

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・(怒)」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・(汗)」

 

 

長い沈黙が続く。

 

このままじゃ、精神的に辛いのでオレから話し掛ける。

 

 

「ごめんね? 新一・・・」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 

こちらを見ようともしない。

 

悲しいなぁ。

 

 

「・・・無理だって言ったのに・・・」

 

 

ボソッと新一が呟いた。

 

見るとちょっと膨れっ面で床を見ていた。

 

拗ねてる子供みたい。

 

 

「新一は・・・オレと演るの嫌?」

 

「そんなことは・・・」

 

「じゃあ、シンデレラが嫌?」

 

「別に・・・」

 

「ドレスが嫌?」

 

「いいや・・・」

 

 

 

「・・・オレが嫌?」

 

 

 

驚いた顔でオレを見る新一。

 

優しく、でもどこか淋しげにオレは新一を見た。

 

 

「ちっ、違う! そういうつもりじゃ・・・」

 

「分ってるよ。だから落ち着いて?」

 

 

そう、分ってる。

 

新一がオレのわがままはちゃんと聞いてくれるってこと。

 

今までそうだったから・・・。

 

 

・・・優しい新一・・・。

 

本当に優しい新一・・・そんなんだから、みんなに好かれるんだよ・・・。

 

 

ねぇ、聞いてもいいかな? ねぇ、教えてくれるかな?

 

 

 

 

――――――――新一の本当の気持ちを・・・――――――――――

 

 

 

 

「オレは新一が好きだよ。この世の誰よりも愛してる」

 

 

これじゃ、プロポーズみたいだな・・・。

 

 

 

 

「ねぇ、でも新一はオレが1番じゃないでしょ?」

 

「かい・・・と・・・?」

 

「いつもオレばかりが求めてる・・・。いつもオレばかりが会いたがってる・・・。

 新一は・・・オレのこと、本当にアイシテル?」

 

 

目を・・・瞳を真っ直ぐに捕らえる。

 

いつも不安だった・・・ある意味、孤独だった・・・。

 

 

―――――オレは怪盗だから、犯罪者だから新一は傍にいるんじゃないか・・・?―――――

 

 

「・・・・・・」

 

 

沈黙が・・・・・・イタイ・・・・・・・。

 

 

「・・・本当に」

 

「え・・・?」

 

「本当にそんなこと思っているのか・・・?」

 

 

その瞳には怒りが見えた。

 

 

「オレは快斗が快斗だから一緒にいる。快斗じゃなければこんなことしない。」

 

「こんなこと?」

 

「シンデレラのことだ! 誰のせいでこうなったと思ってる!?」

 

「あ。すんません・・・」

 

「・・・とにかく、愛してるかどうかなんて、わかんねぇよ。」

 

「・・・」

 

 

そうだよな・・・やっぱ新一は・・・

 

 

「でも、1番好きなのは快斗だ」

 

「・・・し・・・ん・・・いち?」

 

 

ふわりと笑む。その笑顔はとても神秘的で、見惚れた。

 

 

「この前も言ってやったの、もう忘れちまったのかよ?」

 

「あ。ごめん・・・」

 

「ばぁーろぉー。何悩んでんのか知んねぇけど、オレはお前の傍に居るって決めたんだ。

 いくら快斗でもこれだけは譲らねぇからな!」

 

 

呆気にとられた。

 

まさか新一がここまで言ってくれるなんて、思わなかったから・・・。

 

 

「ふっ、あははははは」

 

 

急に笑いが込み上げてきた。

 

安心はできないけど、大丈夫。頑張ってみせる!

 

 

――――――君がいるから・・・だからオレは頑張れる・・・!――――――――

 

 

「快斗・・・お前は何がしたかったんだ?」

 

「大丈夫! 新一は誰にも渡さないよ」

 

「一体、何のこと・・・」

 

 

新一の口から続きの言葉は出てこなかった。

 

体育館脇の控え室だったけれど、俺達の周りは神秘的な空気に包まれていた。

 

 

「・・・ふっ・・・はっ・・かい・・んっ!」

 

 

新一の唇を塞いでいたおれの唇が離れる。

 

 

「新一・・・ずっと、オレと一緒に居てください・・・」

 

 

「・・・・・・・・・あぁ」

 

 

ふわりと微笑みあう。

 

あぁ、本当に幸せだ・・・。

 

 

 

トン トン

 

 

 

扉を叩く音。

 

パっと離れてしまう新一。

 

ああ! 誰だよ、イイとこ邪魔する奴は!!

 

 

「失礼? そういうことは家に帰ってからやりなさい」

 

 

開いた扉に体を預けた姿勢で、こちらを見ていた灰原がいた。

 

・・・邪魔された・・・?

 

笑ってる・・・勝ち誇ったように笑ってる・・・。

 

 

「はっ、灰原! いつからそこに・・・」

 

 

焦ったように顔を赤らめ、オレから距離をとる新一。

 

 

「今よ。黒羽君に伝言を頼まれたのよ」

 

「伝言?」

 

「ええ、クラスの人からかしら? 『主役はいつ来るんだーー!!』ですって」

 

「・・・・・・」

 

 

・・・ちっ、大道具サボったの、もうバレたのか・・・

 

 

「快斗、早く行けよ。サボりはダメだからな」

 

「え〜〜でもなぁ・・・」

 

 

しぶるオレ。

 

 

「早く行った方がいいわよ? 開演まで30分切ってるし」

 

「早く行けよ、快斗」

 

 

新一にまでダメだしされたら、行くしか無いじゃん・・・。

 

嫌々扉から出る。

 

そして、クラスの奴らが待っているであろう体育館に行った・・・。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

快斗が立ち去った後、新一は顔を上げ灰原を見る。

 

 

「彼で・・・本当にいいのね・・・?」

 

「ああ、後悔はしない。それに約束もしちまったしな」

 

新一・・・ずっと、オレと一緒に居てください・・・

 

 

やわらかく笑う。

 

たぶん本人は気づいていないだろう、今新一の中にあるその気持ち。

 

 

 

 

――――――人はその気持ちを『幸せ』と呼ぶことを・・・――――――――

 

 

 

 

灰原はため息を吐いた。そして言う。

 

 

「彼で無くてはいけない理由なんてないのよ」

 

 

だけど新一はかぶりを振る。

 

 

「いいんだ。あいつは俺が居ないとだめだから」

 

 

灰原は淋しげに笑う。

 

彼のそう言った表情はとても穏やかだった。

 

以前の・・・コナンの時の彼とは思えないほどの・・・笑顔。

 

それを、彼――黒羽快斗が引き出しているのは少し癪だけど・・・。

 

灰原は小さく「そう」と呟くと、部屋から出て行った。

 

それを見送り、新一は立ち上がり伸びをする。

 

 

「そんじゃ、いっちょやりますか!」

 

 

快斗の後を追い、体育館に向かった。

 

 

 

2人の未来に幸、多からんことを・・・――――――――――――

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

その後。

 

劇は、てんやわんやになった。

 

なぜなら、シンデレラと王子が近づくと急に照明が消えたり、

音響が勝手に鳴り出したりと大変な騒ぎになった。

 

その影には一人のパソコンを片手に微笑む少女がいたとか・・・。

 

 

「まだ、負けたわけじゃないわよ・・・」

 

 

 

◇飛鳥様からのコメント◇

あといい(汗)

 

哀:「いい度胸してるわね。飛鳥」

飛:「・・・返す言葉もございません」

快:「オレと新一のラブシーンあれだけ?」

新:「じ、十分なねーか! このバ快斗!!(赤面)」

飛:「あれでも頑張ったのですよ? 当初の予定では全くと言っていいほど

   甘く無かったのですから」

哀:「アレで甘いと言うのね。あなたは」(黒)

飛:「・・・・・・・・・(震)」

快:「なにはともあれ、こんな駄作を読んでくれてありがとう」

新:「春日様にも迷惑をかけてしまって。

   飛鳥には十分言っておきますので、コレで許してあげてください」

飛:「新ちゃん・・・(感動)」

哀:「これから、スパルタね。飛鳥」

飛:「嫌だよ、怖いよ、恐ろしい・・・」

哀:「・・・・・・(黒笑)」

飛:「・・・ごめんなさい」

 

読んでくださり、有難うございました。 

 

                   2003.10.28 Asuka

 

◇春日からの御礼コメント的感想◇

ブラボー!!!

いや、もう本当に最高の小説をありがとうございます。

珍しく弱きな快斗が新鮮で、そしてキューンッときました。

日頃は強きだけどやっぱり不安なだなぁ、と改めて実感。

そして新一君が怒りながらも、気持ちを伝えるところは本当にお気に入りです。

もう、プロポーズみたいだなんて、結婚しちゃってください(オイッ)

最後まで哀ちゃんは最強でしたね。

新一に彼で良いの?って尋ねているところが大人だなぁと思いました。

やぱりカッコイイです哀ちゃん。嫁に来てください!!

 

最後にステキな会話もありがとうございます。

新ちゃんにお名前を呼んでいただけて、光栄の至りです。

 

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