「何だよ、それ。」

新一がリビングへと入って見た光景は、

意気揚々とした雰囲気で新品のビデオカメラを使う旦那の姿だった。

 

〜ビデオカメラ〜

 

某有名タレントがCMしていたビデオカメラ。

世界最小サイズで、今は基本と成りつつあるDVD録画可能。

別にそれを買おうと思うのは勝手だが・・・

新一はそう思いながら、ふと部屋の隅にあるビデオカメラを見つめる。

そこには、4,5台のデジカメとビデオカメラが並んでいた。

 

「成長の記録は基本!!」と、快斗は子ども4人の成長を事細かに

写真やビデオに残してきたことは別段問題ない。

新一だって、子ども達の成長は、それなりに楽しみでもあるのだし、

その経過を見るのも後の思い出にもなる。

だが、問題はその結果、なるべく綺麗に残すという意気込みが生まれ、

ほぼ数年に一度はビデオカメラやデジカメを買っていることだ。

中には、プロのカメラマン、顔負けの撮影道具までそろえられていて、

その隣には音を拾うマイクまでもが立てかけてあった。

元女優である有希子がこの道具の揃い具合に、『ドラマが作れるわね ♪』と

感嘆の息をもらしたほど、その種類も数も凄まじい。

 

「新一、また無駄な買い物だって思ってるでしょ。」

「別にんなことは言ってねーだろ。」

 

新一はソファーに座ると、棚に陳列されているディスクへと視線を向ける。

あの中には、雅斗達が生まれた時のビデオから、

つい先日行ったピクニックまでしっかりと記録が残されているはずだ。

ここまで記録している親も珍しい。

新一はそのディスクをひとつ手にとって、ジッと眺めた。

タイトルは“由佳・七歳の七五三”

 

 

「これって、結婚式の時には役に立ちそうだよな。」

「新一の分身を他の男に嫁がせるなんて、絶対ダメ!!!」

 

快斗は親ばかよろしく大きく頭を左右へとふる。

新一はそんな快斗の頭をパシンと手に持っていた雑誌で叩いて軽くため息をついた。

 

「おまえなぁ。いつかはあいつらも嫁ぐんだよ。」

「分かってるけど・・・。」

 

だってだって、と床に“の”の字を書きはじめ、

拗ねモードに突入した快斗に新一はしょうがなく話題を変更した。

子ども達が嫁ぐ話などはその時が来てから納得させればいいのだし。

まぁ、その時はその時で苦労しそうだが・・・。

 

 

「それより、明日の運動会用か?それ。」

「あ、うん。明日は雅斗と由佳が帝丹小学校史上初の

 6年連続学年代表リレーに出るんだし。おまけに6年生ならアンカーだろ。」

 

絶対に逃せないね。っと拳で熱く語る快斗に新一はもはやため息の1つも出てこなかった

 

明日の運動会に親子で行う競技がない!!と怒っていたのはどこの誰だったか。

とにかく、明日の弁当はお重で決定だな。

 

新一は再びビデオカメラの手入れをはじめた快斗を放っておくと、

お重をキッチンの戸棚から取り出すのであった。

 

あとがき

思いつきで書きあげました。快斗ってすごく記録に残しそうと思うのは私だけですか?

にしても、本当に子どもが結婚するときは大変そうですね〜(笑)

 

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