「いやだ!絶対いやだ!」

「俺だって!絶対こっちがいい!」

 

 

ここはとある車の展示場。

そこで若い男女が激しく言い争っていた。

 

「なんでだよ!昨日まではこれでいいって言ってただろ?!」

「でもよ、小さいじゃん!」

 

二人はどの車にしようか、ということでけんかをしているのだ。

ちなみにオレンジの鮮やかな車、『NEWマーチ』を指差しているのは黒羽由希。

今は女となっているが、本名工藤新一という名探偵だ。

そして半泣きで『プレサージュ』を指差しているのが黒羽快斗。

職業マジシャン、由希のよきパートナーであり、今年から夫となる。

 

「大体お前、昨日までマーチのオレンジにしようか水色にしようか迷ってたんじゃねーか!」

「でもプレサージュ見たら…」

「俺はマーチのオレンジがずっと欲しかったんだ!」

 

普段なら人前では女言葉を使う由希も、今回はそれをすっかり忘れている。

というのも、灰原哀がマーチの黒をもっていて、それがすごくシックでキレイで、

でもかたちは可愛らしくて。

由希は車を買うならマーチ!と決めていたのだった。

 

「ほら、プレサージュだったら広いからさ、大勢で乗れるだろ!」

 

快斗は必死にプレサージュの素晴らしさを伝えようとする。

 

「こんだけ広いと、中で寝ても体いたくなんねーし、色だって結構あるし!」

 

見てみろ、ウインカーがカチカチ言うんだぜ!

 

…当たり前だろ、それ。」

あきれたように由希がつっこむ。

 

「だからさ、プレサージュ…」

なおもプレサージュを主張する快斗に、由希は尋ねる。

 

「なんでオデッセがいいんだよ?」

 

 

「子供がたくさん出来ても、これなら広いから大丈夫だろ?」

 

 

 

 

 

黒羽由希こと工藤新一は

普段あほな快斗が時々見せる、この真面目なせりふに

最高に弱いのであった。

結局プレサージュ購入。

半年後、雅斗と由佳誕生。(ぇ!!)

 

 

〜管理人より〜

けちゃこ様、素敵な小説をありがとうございました。読みながら大爆笑。

なんやかんや言っても、快斗君に弱い新一君が素敵です。

車の展示会場で視線を独占したことまちがいなしですね〜(笑)

 

 

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