★ままごと★

 

小さな小さな小学校の学級会で“ままごと”が開かれた。

1年生になったばかりの彼らが友達を作る場として、

そして最近はテレビゲームばかりで模倣遊びをしない子供達への対策として。

 

1年2組の担任の先生は、高校生と同じ年齢の17歳。

なんでも海外で免許を取得し、飛び級で就職したのだとか。

若い先生に最初の内は親御さんからの心配も多かったのだが、

その毅然とした振る舞いと17歳を感じさせない接し方に誰もが賛同の声を上げた。

 

ままごとは主にグループで行われた。

30人のクラスなので、5人ずつの6班をつくる。

もちろん男の子と女の子をバランス良く入れ込んであるのだ。

 

「工藤先生。俺の奥さんやって。」

 

そう言ってトテトテと近づいてきたのは3班の黒羽快斗。

小学1年生とは考えられない頭の回転の良さから、

このクラスでは担任の工藤先生と一番の仲良しだ。

 

「何で、先生が奥さんなんだよ。」

「だって、俺、将来工藤先生と結婚するから。予行練習に♪」

 

普通なら“そっか〜楽しみだな。”と冗談で済ませられる子供の一言。

だが、新一はその瞳があまりにも真剣なのでとてもそんな事は口にできなかった。

 

この学校に来てからと言うものの、彼は“10歳くらいの年の差は平気じゃん”

“先生って、かわいいよね”などと口説いてくるのだから。

 

無理矢理引っ張られていった新一はフウーと気づかれないようにため息をつく。

そして、3班のメンバーに少しだけ冷や汗を流した。

 

そのメンツとは

怪しい黒魔術を使う小泉紅子。

研究が趣味の宮野志保。

ホームズフリークで、小学生ですでにコスプレをしている白馬探。

大阪弁が特徴的で、快斗同様アプローチの激しい服部平次。

 

よくもまぁ、小学生とは思えない変わりどころがここまでうまく

集まったものだと思う。

 

周りの班をチラリと見れば、みな、楽しそうにお母さんやお父さん、

それに子供を演じていた。

 

「工藤、わいの奥さんになりにきたんか?」

「服部君、先生にその言葉遣いは止めなさいと・・・。」

「何、言ってんねん。わいと先生の仲やろ。」

ギャハハハと豪快に笑い飛ばして、平次は新一の肩をばしばしと叩く。

それに痛い・・・と思いながら新一は乾いた笑みを浮かべた。

 

「工藤先生。僕のお相手をするためにわざわざありがとうございます。」

 

平次の無粋な手を払いのけて、白馬はぺこりと一礼する。

平次のように礼儀知らずもどうかと思うが、

一番おかしいのはここまで礼儀を知り尽くしている白馬じゃないかと思うのは

ここ最近のこと。

そんな律儀な白馬に新一もとりあえず軽く頭を下げた。

 

「おいおめーら、勝手なこと言うなよ。工藤先生は俺が誘ってきたの!!」

「黒羽君こそ冗談は止めなさい。先生が困っているでしょう。」

「2人ともアホちゃうか?わいと工藤の仲を引き裂こうなんて無駄や。」

 

そして毎回のおきまり口げんか。

これが始まると、もう収拾をつけるのは不可能だ。

いっそのこと殴ってやろうと思ったことも何度もある。

(ただしPTAの視線もあるためそれは不可)

 

「先生。ままごとに実験ってあります?」

「魔術を用いても構わないのかしら?」

 

大きく肩を落とす先生に最後の一打ち。

もう、教師なんてやめようかな・・・。

新一が本気でそう悩んだのはその日の午後だったとか。

 

 

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