今日は快斗が不機嫌だ。

キッチンで料理をする彼の背中を横目でちらりと眺めながら、新一はそう感じていた。

 

〜ライバル〜

 

いつものように、卵焼きを作るために卵をかき混ぜる手も少しだけ荒く、

みそ汁の味見の仕方だってなんとなく適当そうに見える。

本当に、気を抜けば分からないほどの変化を新一はしっかりと感じていた。

 

「快斗。」

「・・ん?」

 

呼びかけに反応するのも少し遅い。

呼ばれて嬉しそうにほほえんでいるが、なんとなく違う。

 

「なんかあった?てか、今日、なんかあんの?嫌なこと。」

「何で?」

「いや、機嫌悪そうだし。」

 

“俺が何かしたのか?”と付け加えれば、快斗は“まさか!”と笑って訂正する。

それなら、何が原因なんだ?

 

「快斗?」

「ライバルが来るんだよ。今日、京都から。」

「ライバル?」

「そう、小さいときにそいつも東京にいてさ、小学校3年間くらい同じクラスで、

 すっげー仲が悪かったライバルが。また、勝負しようぜなんて言ってさ。」

「ふ〜ん。それでか。」

 

快斗がそこまで嫌う人間なんて珍しい。

白馬や服部には敵対心持っているけど、おそらく探偵だからだろうし。

ん?それを言えば俺も探偵か、じゃあなんであいつら仲が悪いんだ?

 

「新一。どうしたの難しい顔して。」

俺の話がすんだ後、なにかを考え込んでいる新一を下からのぞき込めば、新一は少し笑った。

そう言えば、今日の新一はなだか機嫌がいい気がする。何でだろう?

 

「いや、考え事。そういえば、今日、俺の友達が家に来るんだ。京都から。」

「へぇ〜、新一も京都の友達なんだ。どんな奴。」

 

だから、機嫌がいいんだ。

俺は納得してキッチンへと戻り、続けて質問する。

 

「すっげーおもしろい奴。」

 

新一が人をそこまで誉めるなんて珍しい。

でも、少しそんなふうに誉められる“新一の友達”にやきもちを焼いてしまって、

俺はみそ汁を火から下ろすと、新聞に目を通している新一の隣に腰掛ける。

 

そして、朝の包容♪をしようとした瞬間、チャイムが鳴った。

 

 

「あっ、来たのかも。」

「早いじゃん。俺が出ようか?」

「ん?そうだな、髪ぼさぼさだし、ちょっと頼む。」

 

新一はそう言って洗面所へ、俺は玄関へと向かう。

どんな奴なんだろう?

そんな期待と好奇心を胸に、俺は玄関の重厚な扉をゆっくりと開いた。

 

 

 

「きっと、快斗の奴びっくりするだろうな。」

髪をとかしてから、服を軽く整えて、俺はクスクスと笑う。

俺の友達は俺によく似た顔をしているから、快斗にも似ている。

いや、むしろ俺よりも快斗のほうがそいつに似ているだろう。

 

「「あああーーーー!!」」

 

玄関から聞こえてくる盛大な驚きの声に、俺は久々に腹を押さえて笑った。

そして、はやくその驚いた2人の顔が見たいと思って洗面所から玄関へと向かう。

だけれど、そこには予想に反してにらみ合う快斗と沖田の姿があった。

 

 

 

「いや〜、久しぶりやな。東京は♪」

東京駅に降り立った俺は、昔と変わらぬ風景を見ながらニヤリと口元が動くのをおさえきれへんかった。

ここには、俺の初恋の人がおるんや。

小学校の時、こっちに3年ほど暮らしとった時や、工藤とおうたのは。

テレビを通して臭うを見るたびに、何度会いに行こうとおもたことか。

それでも、この東京には、大好きな人もおつんやけど、大嫌いな奴もおんねん。

 

「今日は、魚もぎょうさん持ってきたしな。」

 

新鮮な青魚もそろそろ空輸で届く頃や。

工藤は魚大好きやったし、あいつは大嫌いやったし、ほんまちょうどええ土産や。

かろうなる足取りで、昔の記憶を頼りに工藤邸のチャイムを押す。

聞こえてくるのは、愛しい声。

がちゃりと扉が開いて、抱きつこうと思うた瞬間・・・俺は不覚にも固まってしもうた。

 

「お・・沖田ーーー!!」

「なんで、黒羽がここにおんねん。」

「それはこっちの台詞だ。新一の友達ってまさか!?」

「はん、わいは工藤がこないにちっちゃいときから知り合いや。

 自分はまだ知り合ってそうなごう時間もたってないんやろ。」

「そういう、お前だって数年振りの再会だろ?

 俺なんて、この半年間、ずっと新一と寝食を共にして過ごしたんだぜ。」

 

なんで、こいつらこんなお子さまな喧嘩をしてるんだ。

てか、こいつら知り合いだったのか?

口を挟めないほどの、すさまじい毒舌の嵐に、俺はしばらくその光景を眺めていた。

そして、思い当たるのは、今朝、快斗が言っていた言葉。

 

“ライバルが来るんだよ。今日、京都から”

 

そうか、沖田がこいつのライバルだったんだ。

すっごい似たもの同士だから気が合うだろうなって思ってたけど、

似てるから反発しあうんだろうな。

でも、朝っぱらから玄関開けてこの喧嘩じゃまた隣から小言を言われるじゃねーか。

 

「おい、快斗、沖田。おまえら、いい加減に・・・。」

「なに、お前まだ名字での呼び合い?」

「なっ、ええやないかそないなこと。」

 

快斗が見下したように笑えば、突っかかっていく沖田。

きっと、小学校のこいつらの担任は大変だったんだろうな。

 

「とにかく、昔からおまえ、俺の好きな物を横取りする癖あるけど

 新一にはふれるんじゃねーぞ。こいつは俺のだから。」

「何勝手なこといってんねん!!工藤は俺のや。

 それに、人の物横取りする癖があるのはおまえやろ。」

 

「いつ、俺がお前の物横取りしたんだよ!!」

「給食のムースとったやないか。」

「それならおまえだって俺のあげパンとっただろ。」

 

次元の低い喧嘩を止めるのにも飽きて、俺はそのばを離れることを決めた。

灰原に怒られるのなら、こいつらだけ怒られればいいそう思って。

 

「そうや。言い忘れ取ったけどな、俺は工藤と結婚の約束してるんやで?なぁ?」

「えっ、嘘だろ。新一!!」

 

立ち去ろうとした瞬間、同意を求める沖田の声に俺の思考は止まった。

 

結婚の約束?

なんか、ちっせーときに無理矢理頷かされた覚えはあるけど、

あれって婚約だったのか?まあ、一応、約束はしたような。

 

「約束・・したな。確かに。」

「そうやろ?」

「はっ、小学生の約束なんて今時の漫画でもやらねーんだよ。」

「負け惜しみ言ううんやない。

 まあ、婚約したどうしは同棲するのが普通やし、決めた!!わいもここに住む。」

「「はぁ?」」

 

そう言って、家に電話をかける沖田を快斗が必死に止めたが、

結局、沖田の親からは“工藤君の家ならば”となぜか許可が出て・・・・。

 

俺はこれから始まる生活を想像するとため息しか出てこなかった。

                                         END

あとがき

本当にくだらないギャグですみません。

いえ、けっこうマイナーなんですが、快新←沖田が好きなんです、私。

沖田って京都だから関西弁にするかどうか迷ったんですが、

快斗との違いを付けるために関西弁にしました。

それに、下の名前は総志だった気がするんですが・・・分からないので保留に。

もし、知っている方がいらっしゃいましたら教えてくれると嬉しいです。

ま、又書くかどうかは気分次第なんですけどね(笑)

 

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