※快斗と新一が幼馴染設定。 新ちゃんはアポトキシンのせいで、今は哀ちゃんの薬に生かされてる感じです。 説明がないと分からない話ですみません・・・(汗) 『快斗、快斗。』 『どうしたの?新一。』 『ひなが・・・。』 『あ、本当だ。巣に戻さなきゃ。』 『でも、人間の匂いがついちゃってるし・・・。』 『なら、俺達でどうにかしなきゃね。』 「んっ・・・。」 蒸し暑さの中で目を覚ました新一は喉の渇きを感じて ベットサイドにあるテーブルへと手を伸ばす。 予想通りの冷たい感触が指先に触れ、それを一気に飲み干した。 隣に居たはずの幼馴染兼同居人は、 おそらく鼻歌でも歌いながら昼食ともいえる朝食でも作っているのだろう。 おかれた水の冷たさから数分前に様子を見に来たことは明らかで。 そこから推測するに食事が出来たので呼びにきたついでに水も持って来たといったところか。 新一はまわりきらない頭でそう推理とも呼べない予測をたてると、 のっそりと起き上がり、汗ばんだ額を拭った。 そしてベットの足元に脱ぎ捨てられた大き目のシャツ (体系はほとんど同じなのに、筋肉のある快斗のシャツは新一のものより一回り大きい) を素肌に羽織る。 「しんいちぃ〜。起きたぁ?」 階段の下から聞こえてくる声に、おまえはエスパーかと 何度口にしたか分からない言葉を内心でつぶやいた。 〜それでも、生きていく〜 顔を洗ってダイニングに入ると、新一の憶測に違うことのない完璧な朝食が用意されていた。 きちんと自分の席におかれた新聞に、彼の気遣いの良さがみてとれる。 一度、こんな朝を見た隣人の少女からは『立派な嫁ね』と太鼓判を貰い 『嫁は新ちゃんだから』とハートマークが付いたような台詞に新一の蹴りが飛んだのは記憶に新しい。 「・・・はよ。」 欠伸をしながら席に着くと、快斗は洗っていた食器を乾燥機に入れ終え エプロンを外しながら彼の向かいの席へと座った。 「おはよう、新一。よく眠れた?」 「ああ。誰かさんが疲れさせてくれたおかげでな。」 皮肉たっぷりに言っても、快斗はニコリと嬉しそうに笑みを深めるばかり。 こんなやりとりをもう何年も続けているため新一も特に気にすることなく新聞を捲った。 食事をしてから新聞を見ることがほとんどだが、 昨晩、関わった事件だけでも目を通しておきたくて。 そんな新一のことを分かっている快斗も特に咎めることなく、 サラダにドレッシングをかけてまっている。 彼曰く、新聞を読む新一を眺めるのもたまらなく好きなのだとか。 「そういえばさ。」 「ん?」 「昔の夢をみた。」 一面に載っている事件を見終えて、 三面を開いた際に視界に映った写真を見て新一は思い出したように言葉を続ける。 小首を傾げてみせる快斗に、その写真を見せると彼は『ああ。』と少し寂しそうに微笑んだ。 「もう、こんな時期なんだね。」 「あのツバメってさ。どうなったんだっけ?」 新聞に載っていたのは、巣立ちをしたツバメたちが電線に並んでいる風景。 小学校の帰りに巣から落ちたツバメを見つけ、それを2人で育てた夢をみたのだ と続けると快斗も記憶を探るように目を細める。 「確か、群れに戻せなくて、冬場に・・・。」 そこまで告げて快斗は言葉を濁す。 ああ。そうだ。 あのツバメは冬を越せず、確か死んだのだ。 この自分の手の中で。 新聞をテーブルの脇に置き、そっと自分の手を見つめる。 あのまま地に落ちて、死なせてあげるべきだったのか。 あれは、自分のエゴじゃなかっただろうか。 今更ながら、そんな気持ちになるなんて馬鹿らしいけど。 「新一?大丈夫?」 「あ?ああ。昨日の事件のせいだな。あんな夢をみたのは。」 苦しむ不治の病のわが子を手にかけた母親。 無理に生かすよりも自然の摂理に従うべきなのだと彼女は告げた。 それでも、それは言い訳に過ぎず、殺したことを隠そうとしたのは確かで。 「確かに俺も無理に生かすことが正しいとは思わないけど・・・。」 「でも、生きたいって意志は一番尊重されるべきことだよ。きっと。」 そう言ってそっと快斗は新一の手を両手で包みこむ。 隣人から貰っている薬で生きながらえる自分を励まそうとしているのだろう。 新一はそんな彼の暖かさに頬を緩めた。 「それに何より、これは俺の絶対に譲れないわがままでもあるんだ。」 「快斗。」 「自然の摂理なんて俺は知らない、俺は新一が絶対だから。」 言葉と共にその手に唇を落とす快斗は、どこかの国のナイトのようで。 新一はその光景をぼんやりと見つめる。 「エゴでも神への冒涜でも、なんと罵られても、俺は新一を死なせないから。」 再び絡み合う視線。 快斗から向けられる強い意志に新一は知らぬうちに頷いていた。 ちなみにその光景をダイニングの入り口で見ていた少女に 「そう思うなら、昼過ぎまでイチャついてないで、さっさと検診に来させなさい。」 と呆れたような声をかけられたのは、言うまでもない。 |