いつも疑問に思うことがある。

それは4月1日に浮上する疑問。

パパもママもこの日にデートするのが2人の決まりみたい。

結婚記念日でもなければ、誕生日でもないのに。

なんで?

 

 

パパとママのいない日

 

 

「それじゃあ、行ってくるから。

 灰原の言うこと良く聞いておとなしくしとくんだぞ。」

 

「お土産、買ってくるから、楽しみに待ってろな。」

 

そう言うとパパはクシャクシャと私と雅斗の頭を撫でた。

ママはいつもより数段お洒落をしていて、綺麗な色のワンピースを着ていて、

パパもテレビで見たモデルさんみたいにスーツを着こなしている。

私はそんな2人に見とれながらも、やっぱり疑問で頭がいっぱいだった。

 

「じゃあ、行って来ます。灰原、あとはよろしく。」

 

「ええ。帰りはどうせ、明日でしょ?」

 

「よく分かってるね。哀ちゃん。

 そうなんだよ、今日は新一が素直な日だからついつい我慢が・・・。」

 

「アホなこと行ってないでさっさと行くぞ。予約時間に遅れる。」

 

「イタッ。新一、耳・・耳が!!」

 

ママはあきれ顔で、パパの耳を引っ張っていた。

バタンとドアが閉まる。

それと同時に、お姉ちゃんが軽くため息をついたのが聞こえた。

 

「ねぇ、哀姉ちゃん。」

「ん?何。由佳。」

 

哀姉ちゃんはしゃがみ込むと、私に微笑みかける。

すごく綺麗だけど、時々、怖い笑顔があるってパパが言ってた。

それって、どんなのだろう?

って、今は、今日の日のこと聞かないと。

 

黙って待っていてくれるお姉ちゃんに思い切って尋ねる。

 

「ねぇ、今日は何の日なの?」

 

「今日。今日はエイプリルフールよ。」

 

「エイプリル?」

 

「そう、嘘を付いても許される日。」

 

「じゃあ、それとパパとママが毎年、この日にデートするのって関係あるの?」

 

私の疑問にお姉ちゃんはようやく意味が分かったみたい。

クスッと意味ありげな笑みを浮かべた。

 

「そうねぇ。今日は由佳のパパとママが出会った日なのよ。」

 

「出会った日?」

 

「うん。とても大切な日なの。2人にとっては。」

 

そう言ってお姉ちゃんはパパとママがよくするように、

クシャクシャって私の頭を撫でた。

 

「さぁ、私たちも夕食にしましょう。」

 

お姉ちゃんの声に雅斗と悠斗、それに由佳が手を挙げてお返事する。

今日はお姉ちゃんの作ってくれたスパゲッティ。

それも肉団子入りなんだ。

 

「じゃあ、手を合わせて。いただきます。」

「「「「いただきます。」」」」

 

今日はエイプリルフール。

嘘を付いても許される日。

 

翌日帰ってきたパパに“ママは嘘をついた?”って聞いたら

“ママは素直だったよ”ってパパが言った。

そしたらママがバンってパパの頭を叩いてたけど顔が真っ赤なの。

 

だから、私にとっての4月1日はエープリルフールじゃなくて

“パパとママのいない日”そして“ママが素直になる日”なんだ。

 

 

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