「先に死ぬのはどっちかしら。」 子供たちが外に出いるため久々に3人で紅茶を楽しんでいたとき ふと哀が思い出したように口火を切った。 その問いかけに快斗と新一は手に持っていたお揃いのカップを テーブルにおいて哀を見る。 「そんなに、真剣な話じゃないのよ。 ただ、新聞に平均寿命の記事が載っていたから。 工藤君って女性の平均寿命くらい生きるのかしらって思って。」 「まぁ、あれはあくまで平均だからな〜。」 「それで、どっちが先に死ぬのかって思ったの?哀ちゃん。」 快斗の表情が少し険しくなったような気がして 哀は不味いことを聞いただろうかと思う。 だけれども、今更引く気は彼女には更々なかった。 黙って頷いて快斗特性のショコラケーキを口へと運ぶ。 新一の為に甘さが控えてあり、その苦みが口の中に広がった。 「快斗を残して死んだら、後が大変だろうな。」 「よく分かってるじゃん新一。だけど新一も案外寂しがりやだろ。 それに、新一、俺が居ないと危ないしね。」 腕を組んで真剣に考える新一に快斗は努めて明るい声を出す。 “死”に対しての感情は、言うまでもないが快斗のほうが大きい。 それは、幼い頃に大事な父親を失っている為だろう。 新一も今までに数々の“死”を見てきたが、 今まで大事な人が亡くなった経験はないのだから。 新一が死ぬ。自分を残して。 そう少しでも考えるだけで気がおかしくなりそうだった。 「でも、まぁ、俺と快斗は片割れみたいなものだから、 片方が死ねばすぐに死ぬだろうな。 ほら、双子の長寿者って片割れが亡くなると 数カ月以内にもう一人も亡くなるだろ。 あのパターンと一緒だ。」 そう言って新一はぽんぽんと快斗の頭を叩く。 その表情にはとても暖かい笑みが浮かんでいた。 「新一。」 「そうね、あなた達は一心同体だもの。一緒にいてくれないとこっちが大変だわ。 仮に片方が先に逝ってしまったなら、私が残りを殺してあげる。」 「灰原、洒落になってねーぞ、それ。」 「馬鹿ね、冗談よ。」 哀はそう言ってクスクス笑うと席を立った。 ごちそうさま、おいしかったわ。そう快斗に告げて。 外に出れば澄んだ秋空が広がっている。 それは、死と無縁のように優しい色彩。 哀は願う。 どうか、2人が苦しまないように、彼らは同時に死んでほしいと。 +御礼+ 拍手リクエストありがとうございました。 |