―追憶の色彩―

 

視界を埋め尽くすのは碧。

どこまでも広がる草原。

そう、幼い俺にとって小さな野原は巨大な草原と同じだった。

 

 

 

何かを忘れている衝動に駆られることはよくある。

友人に何かはなそうと思って、いざ話そうと思うと忘れてしまっていたり

今日はなにかするはずだったと思いながらもそれが思い出せないとか。

それは些細なことだったり、自分の首を絞めるほどの大切なことだったりと

場合場合で異なるが、大抵は数日間のうちにその忘れていたことを、

否応なしに思い出されるものだ。

例えば、「お前○○の書類は?」とか

「調べて置けと言った××はどうだ?」とかいう他人の言葉で。

だけど、話すべき内容、するべき事を他人が認識していないとき、

それは一生思い出されることはない。

記憶の奥底に眠ってしまう。

そして忘れているという事実さえ忘れてしまうのだ。

 

 

 

「快斗。今日の夕飯うちで食べなよ。おばさん旅行でしょ?」

「あ〜。そうすっかな。」

 

平坦な道のりを歩きながら、快斗はどうでも良さそうな返事を返した。

 

幼なじみの青子に7時頃来ると告げ、快斗は静かな我が家に帰る。

母親は昨晩から友人と4泊5日の北海道旅行なのだ。

 

鍵をかけて自室に戻ると、快斗はザッと若草色のカーテンを開けた。

窓から見えるのは裏山の小さな林。

広葉樹が広がるその丘は都市化計画の中かろうじて生き残っている緑だ。

机の正面にある窓をあけて思いっきり深呼吸をする。

新緑の匂いが風に乗って運ばれる。

そう、新緑の碧に包まれるこの時期が快斗にとっては一番のお気に入りなのだ。

そして何より好きなのが、時雨に濡れる若葉を見ること。

もちろんそれは快斗の中だけのちょっとした秘密で、

日頃遊び人として通っている彼を知る友人達にはとうてい予想もつかないことだろう。

 

「どうして俺はこんなに緑に惚れちゃってるんだろうな。」

 

いろんな女を抱いても、男友達とビデオ鑑賞しても、欲求不満であるのに、

緑に包まれるだけで快斗は心が落ち着く。

だけど、そんな自分自身が理解できず、快斗は高校3年になってから

特に女遊びがひどくなっていた。

だからといって、付き合う彼女たちをないがしろに振るわけではない。

自然消滅という形でお互い良い思い出として終わらせるのだ。

 

「俺って、何人と付き合ったっけ。」

 

いつのまにか数えることさえ忘れてしまった。

ひょっとしたら顔さえ思い出せないかも知れない。

そんな快斗を幼なじみや母親は非難するけれど、

別段悪いことをしているとは思っていなかった。

 

彼女たちの望む物は充分与えてきたから。

 

「いったい俺はなにを忘れているんだろうね。」

 

大切な本当の友人である一羽の鳩にクスッと笑って尋ねると、

鳩は小首を傾げてクルックーと返事しただけだった。

 

どうしてこの季節が来ると俺は落ち着いていられないのだろう。

激しい衝動と、義務感。

自分の中で何かを思い出せと警告音がけたたましく響いている。

 

 

 

 

 

出会ったのは突然。

彼は何の前触れもなく俺の前に降り立った。

 

−−−−13年前

 

 

父さんが死んで、葬儀が行われていたとき幼い快斗はその事実を受け入れることができず

家を飛び出して、裏山へ来ていた。

数年前までは休日に父親と遊びに来ていた裏山。

ここでたくさんの手品を教えて貰ったことも良く覚えている。

 

「嘘だろ。嘘だよね。」

 

快斗は泣きじゃくりながら、裏山に広がる小さな草原を歩いた。

そしてその中央にある、古い大樹に額を押しつける。

この木の下でたくさん笑い合ったのが今では夢のようだとも思えた。

 

『おい、ぼうず。』

泣きつかれて眠ってしまっていたのだろうか、

気がつけば辺りはすっかり暮れていて空には星が輝いていた。

こんな時間に人?

快斗は誰なのかを確認しようと眠い目を擦る。

 

「誰?」

振り返っても人はいない。

キョロキョロと辺りを見渡していると、

ククッと押し殺したような笑い声が上から聞こえてきた。

 

『こっちだよ。上。』

「へ?」

『待ってろ。下りてやるから。』

 

ザッと柔らかな風が吹き、新緑の匂いが鼻をかすめる。

そして風が止んだとき、目の前には若草色の薄い衣を羽織った

形容しがたいほど美しい男がたっていた。

 

『おまえ、盗一の息子か?』

「え?お父さん知ってるの?」

『ん、まぁ。』

 

男はそう言って困ったようにこめかみを掻く。

そして何かを言うかどうか思案したような顔つきだった。

 

「ねぇ、お父さんはどこ?」

『今、空に連れて行って貰ったよ。俺の知り合いに空の精霊がいるからな。』

「空の?」

『ああ、新天地に。おまえもいずれはそこで会える、お父さんに。

 でも、それは今じゃない。』

 

ふんわりと優しく男が快斗へと手を伸ばした。

だけどそれは快斗に触れることはない。

優しく風が前髪を揺らすだけ。

男は自分の手を見つめて少しだけ寂しそうに笑った。

 

「貴方も精霊?」

『ああ、大樹の精霊だ。風と緑とを司る。

 そして、ぼうずの父さんと友達なんだ。』

「ぼうずじゃない、快斗っ。」

 

快斗はそう言うと、ぶーっと頬を膨らませる。

おそらく、ぼうずぼうずと呼ばれるのが気に入らなかったのだろう。

男は“それはすまなかった”と苦笑した。

 

『快斗の父さんとは、おまえの父さんが快斗の年くらいのときにあったんだ。

 まぁ、ずっと忘れていたみたいだったけど。死んで思い出してくれたんだよ。』

 

「忘れて?それが寂しいの?」

 

『え?』

 

「だって、さびそうだよ。大樹の精霊さん。」

 

快斗はそう言ってそっと精霊に手を伸ばす。

彼の手が触れた部分にふんわりと彼の暖かさを感じることができた。

精霊は驚いたように快斗を見つめる。

今まで自分のことを気にかけたものなど1人としていなかったから。

 

『寂しいのかも、しれないな。』

「じゃあ、俺が友達になる。お父さんが新天地にいっちゃって寂しい気持ちは分かるから。」

 

無邪気に笑う快斗に精霊はふわりと綺麗に笑うだけ。

快斗はそれが不満なのか、再び不機嫌顔を彼へと向ける。

コロコロと変わるその表情に精霊はさらに笑みを深めた。

 

『その気持ちだけで良い。俺はそうそう出ては来られないんだ。』

 

「精霊さんも新天地にいるってこと?」

 

『ああ、だけど見守っているよ。それに二度と会えないわけじゃない。

 快斗が覚えていてくれさえすれば、また会えるから。』

 

「ほんと?」

 

『本当だ。だけど、このことを誰にも言っちゃいけないぜ。』

 

「うんっ。ぼく、絶対に覚えているから。ねぇ、名前を教えて。」

 

『名前?ああ、そう言えばあったな。新一。新一だ。快斗。

 さぁ、お母さんの所へ戻れ。心配してるぞ。きっと。』

 

「うん、またね。新一。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ。」

 

 

夢・・?

ブルッと体を震わせると、快斗は開け放したままの窓を閉めた。

辺りが暗い。どうやら外を眺めたまま眠っていたようだ。

 

快斗は顔に貼り付いた前髪を掻き上げると、近くに転がっている時計に手を伸ばす。

銀色のアナログ式時計は中学入学と同時に母親から貰った物で、

文字盤のところが光るようになっていた。

「・・・9時?」

快斗は時計をぼんやりと眺めると、目を擦る。

だが何度確認しても、針はしっかりと9の数字を差していて・・・。

 

「やばっ。」

 

夕食の約束を思い出し、快斗は慌てて立ち上がった。

その瞬間、バサリと背中から毛布が落ちる。

 

毛布・・・?

 

青色の見慣れたそれを拾い上げて机の上を見れば、

メモ帳に走り書きされた文字。

 

『疲れてるみたいだから、起こしませんでした。

 夕食はキッチンにあるから暖めて食べてね。青子』

 

簡素な文章ときめ細やかな心遣いに、快斗はありがたさとどうじに気だるさを感じる。

もちろんそれが彼女の行為に対して失礼な感情だと分かっているが、

どうにも快斗にとって青子は綺麗すぎるのだ。

純真無垢。そう、白々らしく思えるほどに。

 

「電話、とりあえずいれとくか。」

軽くため息をついて、これならば最初から断っておけば良かったと思った。

第一、快斗も料理をつくるのは得意であるのだし。

それでも断り切れないのは、やはり幼なじみという関係が故。

 

キッチンに行けば、ラップに包まれた炒めしと酢豚、そして添え物の中華スープ。

テーブルの上にはもう一枚メモがあったが、

それに目を通すことなく料理をまとめてレンジに入れる。

電気をつけていなかったので、レンジの中が煌々と明るく輝いていた。

 

 

テレビもつけず、電気もつけない暗い部屋で快斗は食事をしながら先程の夢を考える。

けれど、考えて思い出したことは誰かと会った。たったそれだけ。

 

 

「快斗。おはよっ。」

「おう。」

「どう、おいしかった夕食?」

食事の後、中途半端に眠ったせいかその夜はあまり寝付けず、

睡眠不足気味の快斗に青子は何の躊躇もなく話しかける。

 

「あ、もちろん。おばさんに御礼、言っといてくれよ。それに、毛布も。」

 

味、考え事してたから覚えてないな。と思いつつも当たり障りのない返事をする。

もちろん表情は本当においしかたっと演出しているから、

目の前の少女が気づくはずもない。

父親の遺言であり、汚い自分を偽るために完成されたポーカーフェイス。

これほど役に立つ物はないと快斗は常日頃、身を以て実感している。

 

「毛布?」

「ああ、だから。俺が眠ってたからかけてくれたんだろ?」

「青子が言ったときには、もうかけてあったよ。自分で着たんじゃないの?」

 

不思議そうに小首を傾げる青子に快斗も一瞬思案した表情になる。

だけれどこれ以上なにかと騒がれるのも面倒なので“そうだっけ”と曖昧な返事を返した

青子はそれでもやはり疑問を持って、何か言おうとしたが

チャイムが鳴ったために諦めて席にく。

「後でね。」とあまり歓迎したくない言葉を付け加えて。

 

 

ストレスが溜まった。

こんな日は女と遊ぶに限る。

それが快斗の日常。

 

今日も学校帰りに交際暦2ヶ月の彼女とホテルに行った。

もちろん彼女といっても体の相性だけで繋がっているような物だ。

一通りの諸事を終えて、快斗はなおも媚びる女を引き剥がし、気だるそうにタバコを吸う。

女はベットから起きあがって、恨めしそうに快斗を見つめていた。

 

「ねぇ、なにかあった?」

「あ?」

「私を抱くのってそんな時でしょ。」

「まぁ、な。」

「何それ。否定しないの?」

「嘘をつかないだけ。」

素っ気なく返事して快斗は小さなテーブルの上の灰皿にタバコを押しつける。

そして、脱ぎ散らかした制服を着込んだ。

あまり長居するわけにはいかない。

 

「そう言えばさ。」

快斗がドアノブに手をかけた瞬間、女が思いだしたように口を開く。

「快斗って、裏山の木が好きなんでしょ?」

「そんな事言った?」

「うん。言ったわよ。」

 

裏山・・・その単語に快斗は開けかけていたドアを閉めた。

女は快斗を引き留められたことに嬉しそうにほほえむ。

 

「やっと視線をむけたわね。」

「いいから、続き。木がどうしたんだよ。」

「もうっ、話を逸らさないでよ。・・まぁ、いっか。

 でね、あそこさ、伐採されるんだって。

 私の務めてる会社が受け持ってるんだけど、住宅地にするらしいよ。」

 

伐採?

 

ざわりと胸の辺りでとてつもない恐怖感がわき起こる。

そして気がつけば反射的に体は動いていた。

呼び止める女の声さえ気に留めることなく。

 

 

 

 

 

走って、走って、今までにないほど走った。

ようやく視界の先に浮かび上がってくる裏山は夕焼けを浴びて紅く染まっている。

それが、まるで森の流した血のようだと快斗には感じられた。

 

森の入り口まで来たときには立入禁止の札がかかっており、

その先には数名の作業員の姿が見える。

快斗は素早く、先程の女(彼女はあれでも社長秘書だ)に変そうすると、

ロープをくぐった。

 

「あれ、牧原さん。どうかしたんですか?」

 

1人の作業員が驚いたように駆け寄ってきて深々と頭を下げる。

そう言えば彼女は社長秘書でありながら、社長の一人娘とも言っていた。

なるほど、それなりの地位はある分けか。

快斗は美人秘書の顔でにっこりと微笑みながらそんなことを考える。

 

「社長からの伝言で、今日はもう帰ってだそうよ。

 明日からの作業に専念してくれればいいって。」

「あ、はぁ。社長がそんな気遣いなんて珍しいですね。

 分かりました。おいっ、みんな片づけろ。」

 

男は頬を紅く染めながら、周りにいる作業員にてきぱきと指導をしていく。

快斗はそんな男達を脇目に、急いで森の奥へと入っていった。

 

彼らの姿が見えなくなって、ようやく変装をといたときにはもう

森全体を夕闇が包んでいた。

 

あの時と同じだ・・・。

 

快斗は夜空を見上げてそう思う。

ようやく思い出した。

何を忘れていたのか、どうしてこんなにも心が満たされないのか。

 

「新一。いるんだろ?」

 

大樹にそっと手を沿えて、立派な幹を見上げる。

新芽の萌えるような緑をみるだけで快斗は感情が高ぶっていくのを感じた。

 

 

 

『へぇ、覚えてたんだ。』

 

 

 

後ろから聞こえる懐かしい声。

快斗は緩んでしまう口元を覆い隠しながら振り返る。

あれほど得意と豪語していたポーカーフェイスも全く繕えない。

 

 

十数年ぶりの再会。

だけれど彼は月明かりの下で昔と変わらない姿で立っていた。

漆黒の髪に、碧の衣。透明な肌に桜色の唇。

自分は無意識のうちに女に求めていた姿はこれだった。

だから、必要以上に女を抱いていった。

彼に匹敵する女なんているはずもないのに。

 

 

「新一。」

『大きくなったじゃねーか。もう、ぼうずとは呼べないな、快斗。』

 

 

ふわりと優しく微笑む彼を抱きしめようと手を伸ばす。

もちろんそれが触れられないものだとは分かっているけれど。

空を切る両手。

 

悔しそうに新一を見れば、彼は哀しそうに微笑んでいた。

 

『おまえに言ってなかったけど、

 俺を思い出すことができた人間の願いを一つだけ俺は叶えることができるんだ。』

「願い?」

『そう。今までそんな奴、いなかったからすっかり言うの忘れてた。』

 

ポリポリと困ったように告げる彼は、どこか幼くて、

快斗は純粋にかわいいと感じてしまう。

 

「で、どんな願いでも良いの?」

『ああ。例えばパンドラとか。』

「え?」

 

驚いたような快斗の表情に新一はピンッとデコピンをする仕草をして笑う。

 

『精霊は何でもお見通しなんだよ。てか、ずっと見守ってきたからな。快斗の事を。』

「ずっと?俺が会った日から?」

『ああ。まぁ、盗一からの頼みってのもあったけど。

 少しだけ今は壊れかけてるけど、おまえはがんばってるよ。快斗。』

 

 

こんなにも汚く生きている自分を全て知っている上での新一の言葉は

快斗の心の奥底に染み渡った。

青子がよく励ましてくれる。そして母さんも。腕に抱いてきた女達も。

だけど、それは自分を表面上しか見ていない上での言葉。

本当に孤独な夜の姿は誰も知らないから。

 

『だから、はやく願いを言え。パンドラさえ手に入れられればお前は自由になれる。

 はやく・・・しろ・・よ。あんま、時間がないんだ。』

「新一?」

『つっ。』

 

先程まで元気だったはずなのに、彼は左腕を押さえて耐えきれないように片膝をつく。

よくよく見れば彼の手は透明な肌色から、真っ赤に染まっていた。

 

「どうしたんだよっ。新一!!!」

 

『伐採があったのは知ってるだろ。今日は半分ほど切られたんだ。

 俺の力はこの森から。だから、もう長くはない。この森が死ねば俺も死ぬから。』

 

苦しそうな表情で、それでも安心させようと必死に微笑む新一に

快斗は胸の辺りを締め付けられるような感覚を覚える。

そして、同時に浮かび上がってくる怒りをそのまま握り拳に込めた。

 

「嫌だ。新一。やっと、思い出したのにっ。」

『俺がいなくても大丈夫だよ。はやく・・願いを。』

 

願い・・?

それはパンドラを破壊すること。

そう、ずっとそうだった。

父親のKIDという顔を知ってから、ずっとそのためだけにやってきた。

だけど、今願うのは、そんなことじゃない。

 

「新一。俺の願いを叶えてね。」

『ああ。ほら、言え。言葉にすればすぐに叶うから。』

 

快斗は目を瞑って大きく深呼吸する。

新緑の匂いと、冷たい空気が体中を満たした。

 

「・・・新一を人間にしてください。」

『えっ。』

 

快斗の言葉と同時に、凄まじい突風が森を駆け抜ける。

目も開けていられないほどのそれに、快斗は地面にひざを付ける。

ザアザアと吹き抜けていく風は一向に収まる気配がない。

 

「新一っ。新一っ。」

 

目を開けていられないことにもどかしさを感じながら

必死で快斗は彼の名前を呼ぶ。

本当に我が儘な願いだから、空の精霊が怒ったのかも知れないと思った。

そして、新一を連れて行くのではないかと。

 

 

 

 

 

「新一!!!!」

 

 

 

 

 

風がやむ。

ピタリと。

 

快斗はゆっくりと目を開ける。

ひょっとしたらもう、彼はいないかも知れない。

そう考えるだけで、目を開けるのが怖かったが・・・。

 

「・・・良かった。」

「馬鹿だな。快斗は。」

 

目の前には呆れたような表情のかれ。

だけど、体は透明じゃなく、そっと触れれば感触があった。

 

「ごめん。俺の我が儘で。人間なんかにしちゃって。」

 

「構わないぜ。人間でも精霊でも。それよりおまえの願いは・・・」

 

本当にこれで良かったのか?

心配そうに見上げる彼を、抱きしめない事なんてできない。

 

なぁ、分かるだろ。俺は新一をずっと求めていたんだ。

こんなに狂った愛し方しかできないほどに。

 

そんな気持ちを込めて強く、強く、抱きしめた。

 

 

「ずっと傍にいて。新一。」

 

「ああ。なぁ、快斗。」

 

「ん?」

 

「快斗って、昔から暖かいな。」