Stage24 まずいな 銃弾戦を交えて数分後KIDは入ってきた扉を盾に銃弾を避けながら、 ギリッと奥歯をかみしめた。 通常ならば、改造銃を使い相手を倒すのには他愛ない状況だ。 広さも充分あるし、彼女程度の拳銃の腕ならば怪我は負っても、死ぬことはない。 (まあ、その前に新一が打たれる可能性が高いのだけれど。) それに、新一が関わっているのなら、なおさら、麻酔銃などという 殺傷能力の低い物など使わずに死なない程度に攻撃を仕掛けるのが打倒だろう。 組織と戦ったときも、新一を守るために拷問まがい的な事も幾度も行ってきたし、 女だからと遠慮する気は毛頭ない。 さらに今は、新一に意識がないため、非道と言われる方法を用いて手を抜かずに戦える。 そう、これに“時間”という状況が組み込まれたなら。 新一を盾にし、楽しそうに無駄玉を使い続ける彼女の後ろには、まだまだ銃弾が積まれていて、 あれが全て終わる頃まで待っていたら、おそらく新一は死んでしまうだろう。 すぐにでも、新一だけは保護して雅斗や由佳達に引き渡したかった。 KIDはその回転の速い頭をフル稼働させて、最前の方法を検討する。 新一を救い、そしてあの女に罰を与える方法を。 「隠れているばかりじゃ、貴方の大事なお姫様は死んでしまうわよ。KID。」 「ですが、貴方にも時間はないはずですよね? 瞳の保存は難しいですし、死んでしまってから時間がたつとその光沢や艶は失われる。」 一種の賭だった。彼女が新一の瞳を本当に望んでいるかどうかは定かではなかったから。 もし、ここでKIDを呼び出すためだけにこんな事件を仕組んだのなら、この脅しは通用しない。 「そうね。じゃあ、一発でけりを付けましょう。」 KIDはその言葉に全身の緊張がとれたのを感じた。 これでどうにか、道が開かれたのだから。 「このやり方は好きではないんだけどね。 それでも、はやく瞳を除去しなきゃいけないし マリオネットは完成させたいから。」 「オーソドックスなやり方ですが、お互い利益のある方法ですしね。」 用意された拳銃はひとつ。 中に入っている銃弾もひとつ。 そうロシアンルーレット。 「弾は私が詰めても構わないかしら?」 「どうぞ。」 先程までの戦いが嘘のように穏やかな会話がその空間にはあった。 だが、内容はその冷静な口調とはほど遠い物だ。 ジェーンは銃弾に軽くキスを落としてから、黒光りする拳銃に弾を詰めKIDへ手渡す。 KIDはそれを受け取ると、銃弾の入っている部分を回転させた。 カラカラとそれはまわり、ピタリと止められる。 「じゃあ、私から。」 ジェーンはこめかみに銃口を押しつけて引き金を引いた。 カチャっ不発の合図とともに、ジェーンはニコリと微笑んで 再び拳銃はKIDの手の内へと戻ってきた。 KIDも臆することなく、引き金を引く・・・・・カチャっとまた不発の音。 それが、幾度となく繰り返され9発はいる銃弾の8発目までが終わった。 つまり・・・次の一発には確実に弾が込められている。 KIDは正直、この拳銃を彼女に渡すのは気が引けた。 別に、目の前で彼女が死ぬのは構わない、だがその一発を自分に向けられたとしたら。 避ける自身はあるが・・・その後は不利な状況だ。 なんせ、くどいようだが銃弾は彼女の後ろに積まれているのだから。 「心配しなくても、貴方を撃ちはしないわ。」 「どうでしょうね。私なら貴方を撃ちます。」 「ふふ、紳士とは思えないわよKID。ほら、早く渡して。 彼女を見殺しにはしたくないでしょ。」 ジェーンの瞳にはもう殺気はなかった。 そう、その瞳を閉めるのは安堵感。 KIDはその時、ようやく彼女の真意をつかめたような気がした。 目は口ほどに物を語ると言うが、あれは本当のようで・・・・。 「死ぬのを望んでいたんですか?」 「正確には、死ぬチャンス、もしくは死ぬ場所ね。 優也が私と手組んでから楽しむために無関係な人間を殺したことが許せなかった。 組織に信用されるために私自身も殺人に直接的ではないにしても関与してきたわ。 本当は全て分かっていたのよ、叔父が死んでも変わらないって、KIDを殺しても同じだって。 それにマリオネットを作っても誉めてくれる人はもういないから。 ただ、羨ましかったの。大事な人を失ってもその意志を継いで強く生きている貴方が。 幸せに生活している貴方が。 ・・・最期に私のお願い聞いてくれるかしら?R.Aを・・黒の組織を完全に潰して。 私のためにではなくこのくだらない人形劇を終わらせるために」 銃口を押しつけて、ジェーンは初めて涙を流した。 この十数年、無駄なような復讐に当てた時間だったけれど、それなりに楽しくて・・・・。 もうすぐ、あの優しかった父に会えるのだと思うと少しだけ気が楽だった。 「ゴメン。お母さん。」 病院で痴呆症のままの母親を残していくのがだけが唯一の心残り。 もう、自分が娘かどうかも分かっていない母だけれど。 私が死んだら、彼女は涙を流してくれるだろうか? 目を瞑って、引き金を引いて・・・・・ 痛みを感じたのは・・・・腕・・・・。 「・・・腕?」 「どんな奴でも犯人だけは死なせなれないんだよね。眠りの姫君に後で怒られるから。」 打ち抜く一瞬にしか、隙が出来なかったから腕には掠ってしまったけれど。 そう付け加えて、KIDはいや、快斗は新一を抱き寄せ、クルリとドアの方へと向き直ると ゆっくりと歩き始める。 「よけいなこと・・・。」 「俺も、母親が一人で泣く姿を何度も見てきた。あんたの母親ほど症状は重くはなかったけれど 精神的にもやばかった時期があったんだ。ここで、あんたがいなくなったら 母親は本当にくるっちまうぜ。あんたの為じゃなくて母親のためだよ。」 「・・・・完敗ね。」 走り去っていくKIDの背中を見送って、 ジェーンはその場に崩れ落ちるようにして倒れた。 仰向けになって、特徴のない天井を見上げると・・・ふと思い出されるのは叔父の言葉。 『俺を恨んでもKIDは恨むな。』 「貴方の言う通りよ、叔父さん。」 この結果に満足している自分に気が付いて、ジェーンは声を出して笑った。 ようやく、自分自身の人生を歩むことができる。 まずは、償いという形でだけど。 これは、終演じゃない開演なんだ・・・・どこかでそんな声が聞こえた気がした。 あとがき アクションが書けない。 私の文章力の無さがありありとでているんですけど・・・・。 いつかは、まともなアクションが書けるようになって「マスタング」でリベンジします!! さて、次で一応お話しは終了。でも、ちょっと続きがあります。 プロローグみたいな感じですから、あと2話ですね。正確には。 |
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