Stage13 ぐるりと、死体の周りを回ってじっくりと事細かに観察する。 全体的に不自然な点は何もなかった。 やはり事故死か・・・ 新一がそう思い始めたとき彼の手が少しただれているのに気がつく。 近くによって確認するとそれは紛れもないやけどの後だった。 [やけど・・・。] [どうかしたの?由希。] [ジェニー刑事。ここを見てください。] [えっ・・・これはやけどの後ね。] ジェニー刑事はそれを確認すると速急にそのことは警部へと伝えるために、 部屋を飛び出す。 新一はそんな彼女を気にすることなく今度はベット周辺を丹念に見渡した。 そして、気がつく。 そばにある植木が枯れていることと、ベットの下に落ちている古びた写真に。 [由希。昨晩の状況を彼らから聞くことが出きるそうよ。] スッと写真を持って新一が立ち上がった瞬間、声を奮起させてジェニーが戻ってきた。 事故死ではない可能性が出てきた以上、追求することができる。 新一はその時確信していた。その話が聞ければおそらく事件の全容が見えてくると。 [それでは、昨晩の状況を・・・家主のルーシーさん。説明していただけますか?] [はい。] 昨晩、彼らは高校の同窓生のあつまりという名目で遅くまで酒を飲んでいた。 メンバーは亡くなったジョーンズと家主のルーシ、彼女の親友のリサ。 そして、小太りの男と長身の男。 大いに盛り上がり始めたとき、ルーシーはコーヒを持ってくる。 そのコーヒを飲んでから暫くして、ジョーンズは先に部屋に戻ると席を立ち、 3号の部屋を選んだ。 [部屋はどうやって決めていたんですか?] [4部屋あるうちから好きにカギを彼自身に選んで貰ったんです。] 新一の質問にルーシーは強ばった表情で答えた。 新一はそのことをかるくメモすると、話を続けるように視線で即す。 [そのあと、私が前日に焼いたクッキーを取りに行くために席を立って、 すぐに戻ってきました。] [ジョーンズの部屋に行くためには彼らが使っていたリビングから 出入りするしかない。これは、事故死で決定じゃないのかね?] ルーシーの話が終わると、警部はぐるりと部屋の中を歩いてそう呟いた。 他の者も同様に考えているらしく、うんうんと首をたてにふっている。 だが、新一は断じて首を縦に振ることはなかった。 [今の話で、全てが分かりました。] [由希、どういうことかしら。] [これは事故死ではありません。りっぱな殺人事件です。] 目をつぶってゆっくりとそう告げる新一の言葉は静寂した室内に染み入るように響く。 発せられた言葉の意味とその穏やかな声音とのギャップに 初めのうちは、その言葉の意味をそのまま受け入れることさえ出来なかったほどに。 [由希。推理は後から聞くわ。犯人は誰なの?] [この家の所有者。ルーシーさんです。] まっすぐな蒼の澄んだ瞳がソファーに座り込むルーシーを射抜く。 それは、嘘を決して許さない強いまっすぐな瞳。 ルーシーは思わずその瞳から逃げるように視線を下へとうつむかせるが、 すぐに顔を上げて、発狂したように叫んだ。 [私がいつ、彼を殺したっていうの?それに、どうやって殺したのか聞かせてよ。] [簡単ですよ。貴女の手袋さえ取っていただければ。] [ルーシーさん。取っていただけますね?] ジェーンの穏やかな要求にルーシーは震えながら手袋をはずす。 そこにはくっきりと、やけどの後があった。 [これは・・・。] ジェニーは先程見た被害者の男性、ジョーンズと似たようなやけどの後に言葉を失った。 そして、それと同時に新一の方へと視線を移し、推理の続きを求める。 [彼女のとった行動はこうです。まず、ドライアイスを大量に買い込み、 目的の部屋3号室のベッドのしたに設置しました。 まあ、冬なので溶けることはありません。 そして、つぎに睡眠薬入りのコーヒーを飲ませて 彼がその部屋へと行くように誘導したんです。] [仮にそうだとして、どうやって3号室に入れるんですか。] [簡単ですよ。すみません、みつかりましたか?] 新一がそうキッチンの方へ声をかけると、現場にいた他の刑事達が数名、 カギを4本持って出てくる。そのカギはすべて3号室のものだった。 [こうすれば、どれをとっても必ず3号室ですよ。] 番号の書いてある方を見えないようにキーホルダーをかけておけば、 それが同じカギだと気づくはずもない。 新一はそう付け加えながら、勤めて冷静に話を続けた。 [カギはおそらく、クッキーを取りに行くときに取り替えたのでしょう。] [でも、ルーシーがコーヒーを持ってきたとき自由に選び取ったわ。 睡眠薬入りのコーヒーをジョーンズだけが飲めるはずは・・・・。] 親友のリサは震えるルーシーの手を優しく握って、ゆっくりと回想するように答えた。 だが、そのトリックなど新一に対しては意図もたやすいことだ。 [この写真を見て分かるように、ジョーンズは左利きでした。 ちなみに、ルーシーさんを含めた4人の方は右利きですよね。] [なぜ、それを?] ベッドの下で偶然発見した、古びた写真。 そこには、学生時代のルーシーとジョーンズ、それにリサが3人で写っていた。 おそらく、テニスか何かをしていたのだろう。 ジョーンズは左手にラケットを持って構えて、女性2人は右手に持っている。 [ちなみに、長身の男性は先程タバコを左手に持っていたことから分かりました。 あと、もうひとりの方は、眼鏡を外す手が右手だったので。] [さすがは、由希ね。] 本当に些細な行動をしっかりととらえ、そしてそれと同時に必要な情報だけを選択する。 これは、まさに探偵の素質そのものだ。 [コーヒーカップに口を付ける場所は、利き手によって変わってくる。 つまり、コーヒーカップ全ての左利きしか口を付けない場所に 睡眠薬をぬっておけばいい。] [なるほど、そうすれば彼は睡眠薬のぬってある場所に口を当てる。] 警部は納得したように大きく頷いた。 それを、横目で見ながら、新一は推理ショーを閉じるべく口を開く。 [ドライアイスが暖炉の熱によって溶けだし、一酸化炭素中毒を起こしたんです。 植物が枯れていたのも、おそらく・・・。] [ふふ、なんでかしら。絶対うまくいくと思ったのに。] [ルーシー?嘘でしょ?] 顔を上げたルーシの表情は恐ろしいほどの笑顔だった。 先程の上品な貴婦人の様子などどこにもない。 そんな、ルーシーを見上げながらリサは愕然と言葉を発した。 [泥棒猫が、何を言っているのかしら。] [何のこと?] [おそらく、ジョーンズさんはリサさん、貴女の昔の恋人ですよね?] [えっ!?そうですけど・・・・まさか、ルーシー。] リサは合点が言ったのか、ルーシーの顔を見つめた。 ルーシーはそれに満足げに笑う。 [そうよ、私はジョーンズを愛していたの。貴女が奪ったのよ。 私の・・私の大事な人を。それなのに、ジョーンズを貴女は捨てた。 ジョーンズは今も貴女しか見ていなかった。私だけの物にしたかったの。] 涙ながらにルーシーはそう言葉を言い終えると、リサの手を払いのけて、 素早く新一の後ろに回り込み、こめかみに胸元にしまっていた拳銃の銃口を押し当てた。 あとがき 推理は分かりにくいですので、飛ばしてくださって構いません。 トリックは某番組、●SOのパクリです(爆) |